【お焚き上げ】まだあった黒歴史

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この間、他の記事で僕は黒歴史を公開した。でもそしたら芋づる式にもう一つ思い出しちゃったんだ。これを公開することで、現在の僕にまで疑いの目を向けられてしまうかもしれないというリスクはあるんだけど、お焚き上げだと思って吐き出しちゃうぞ。

あれは中学生の時だった

魔女宅

みんな、スタジオジブリの名作「魔女の宅急便」は知っているかい?僕はジブリ作品の中では魔女の宅急便が一番好きだ。なんていうか世界観が美しい。

僕がまだ小さい時に金曜ロードショーでやっていたのを観たはずなんだけど、子どもの僕にはまだちょっと早かったのか、おもしろさが全然わからずとくに印象にも残らなかったんだ。そんなんだから、我が家では僕が留守番とかで退屈した時用に、そういうのは母親がマメに全部録画をしてくれていたのだけれど、魔女の宅急便のテープは僕はその存在すら忘れていた。

あれはたしか中学1年生の夏休みだったと思う。当時我が家ではケーブルテレビを契約していて、40種類くらいの専門チャンネルが観れたのだけれど、さすがに毎日毎日張り付いて観ていれば飽きる。そうなってくるともう後は100本以上はあるであろうビデオの大発掘大会だ。

先頭集団はもうヘビーローテしているのでアウト・オブ・眼中。「あれも観た、これも観た」と掘り進んでいくと、出てきた。

「まじょのたっきゅうびん」

もうマジで退屈MAXだったので、かなり渋々、消去法で僕はそのテープをデッキに入れた。魔女の宅急便が選ばれたのは、先の通り内容すら全然覚えていなかったから。新鮮さを求めてだった。(おい勉強しろよってツッコミはナシだぜ!)

数分後、僕はテレビの前で正座していた

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「なにコレ……めっちゃおもろいやん」

いや、もう言葉にならないくらいの衝撃だった。

何が衝撃だったのか今になって冷静に分析してみると、①キキちゃんかわゆす!②複雑で淀んだ現実とは違う、物語のようなシンプルで美しい世界!(そりゃそうだろ物語なんだから)だったのではないかと思う。

とくに①!!当時の僕からするとキキちゃんはお姉さんだ。でも手の届かない程の差はない。②は、もう覚えていないが当時の僕は何か現実に不満を持っていたようだ。でも今未来の僕からひとこと助言をさせてもらえるのだとすれば、「勉強しろ」。

1回目が終わってすぐに巻き戻してもう1回観た。そして次の日から僕は毎日必ず4回は観るようになる。何度観ても新鮮だった。その結果……

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恋をしました

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出ました中二病の定番“2次元への恋”。ちょっと早かった。

夏休みが終わってからも、僕は日に4回観るペースを変えることなく、その為に朝は4時に起きて2回観てから学校に行っていた。残りの2回は家族が寝静まった後だ。

この頃の僕にとっては、この魔女の宅急便の世界が詰まったビデオテープは命そのものだった。僕は勉強が嫌いでお世辞にも頭が良いとは言えなかったが、さすがにこのペースを続けていたらビデオテープが切れてしまうのではないかと心配になり、貯まっていたお小遣いで公式のテープの購入を決意する。

あの日のことは今でも鮮明に覚えている。僕は放課後、家に帰るが早いか学生服のまま自転車に乗って、10kmは離れた隣町の本屋を目指した。茜色に重たい雲の流れる、今にも泣き出しそうな天気だった。でもそんなことは構わない。僕は大好きな恋人を迎えに行くかのようなウッキウキな気分で立ちこぎでペダルを踏み続けた。頭の中では槇原敬之のモンタージュがエンドレスリピートされていた。

そして、隣町に入るか入らないかくらいのところで、今でいうところのゲリラ豪雨みたいな強い雨が降り始めた。でも僕は引き返さなかった。それどころか、決して結ばれることのない2人の恋を象徴しているようで、逆に燃えた。

きっと本屋の店員さんもビックリしたと思う。これでもかってくらいにズブ濡れになった中学生が、ぜーぜー肩で息をしながら入ってくるなり、一直線にビデオコーナーに入っていたんだから。

目的を達成した僕が本屋の外に出ると、雨は上がり、茜色の雲間から光が射していた。これがまた僕には「神様が2人の恋を祝福している!」と脳内変換される。ちなみに、槇原敬之的にはこの展開は失恋確定パターンだ。

募る想い。止むことのない切なさ

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当時の僕には悪いんだけど、この恋は最初から負け戦だ。進展は絶対にあり得ない。でも恋をしてしまっているのだから、心は進展を求める。当然だけどどんどん切なくなっていく。

僕はマジでキキちゃんに会いたくて会いたくて震えていた。そして現在の僕もこれから話そうとしていることを思い出して、キーボードを打つ手が震えている。

まず、いつキキちゃんが遊びに来てもいいように部屋を鬼のように掃除した。そして、僕が学習机として使っていた藤の座卓の中央に、女の子が喜びそうなあめちゃんやらを買って来て常備するようにした。

その結果、母親は僕に彼女が出来たと勘違いして「○○ちゃん?それとも△△ちゃん?お家に呼びなさいよ♪」と茶化した。違うんだ母さん、家に呼ぶもなにも家の中に、もっと言えばテレビの中にいるんだ……。

あと、僕が家で飲む物はコーヒーか水がデフォになった。これは作品中でキキちゃんが飲んでいたからだ。なので、恋で眠れないのかコーヒーの飲みすぎで眠れないのか、わからなくなっていた。これもまた、両親を「毎日夜遅くまで勉強して!」と勘違いさせてしまうことになり、僕の家での扱いはどんどんマイルドになっていった。

やるせない想いは募るばかり。僕は買って来たビデオテープのケースの表紙を抜き出し、ひたすらキキちゃんの絵を描き写すようになった。とくに意味はない。あと気に入ったシーンのパズルも買って来てたちまち完成させて、額に入れて部屋に飾った。

それでも届かぬ想い

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当然だ。これは最初から負け戦なんだ。

進級しても、僕の恋は冷めなかった。この頃にはもはや、作品中のセリフをすべて暗唱出来るまでになっていた。仕上がりすぎだ。

どうしてこの想いは届かないのか?(だからこれは最初から)

どうすればキキちゃんに触れられるのか?(だから)

僕は真剣に悩み、方法を模索した。その結果……

仙道魔術に目覚めました

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僕はこの頃、キキちゃんが現実には存在しないことをようやく理解し始めていた(遅え)。でも想いは消えるどころか日に日に強くなっていくばかり。

――現実ではどうすることも出来ないのなら、何かそれを乗り越える未知なる力が必要だ。

僕はそんな、一歩間違うとマッドサイエンティストみたいな発想で再び町の本屋に行く。向かったのはオカルト本のコーナーだ。すると、目にとまったのは怪しさ満点の「仙道魔術」の本だった。手にとってパラパラと読んでみた僕は、再び神の祝福を確信する。

なんとそこには、意のままに魂を作り出す秘法だけでなく、空中浮遊の方法まで書かれていたのだ!やったぜ!これで俺もキキちゃんみたいに空が飛べる!!

だんだん怪しくなってきた。つまりこの本に書かれていることをマスターすれば、キキちゃんをこの世に生み出せるだけでなく、一緒に飛行デートまで出来るのだ!みてろよトンボ!俺はお前みたいに文明の利器の力なんて借りないぜ!

正直、中学生の財布には致命的なくらいのお値段だったが、当時の僕がそんなことを気に留めるはずもなく、即買いしてまたウッキウキで自転車をこいで帰った。

――神よ、あなたは僕に「行け」と仰っているのですね?

そんなことを考えながら……

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デスティニー感じちゃう

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その日から僕は、仙道魔術の修行に明け暮れる。奇しくも、僕はキキちゃんと全く同じ13歳で魔術の修行を始めたのだ。スゴイ!やっぱり僕達は結ばれる運命にあるんだ!なんて思って田中義剛もビックリの壮大なお花畑状態になる。

しかし、先の見えない恋にやっと一筋の光が射した気がした矢先、いきなり問題が発生する。僕の買った本はシリーズものだったようで、いたるところに「これについては前著を参照」と書いてあった。順番からいくと、僕は応用編から手を出してしまったみたいで、肝心の基本中の基本となる“オーラ視”(オーラの強いパワースポットを見つける)の方法が書いていなかったのだ。これが出来ないと、魂を生み出すことも、空を飛ぶことも出来ないという。

当然のことながら僕は、血眼になってその“前著”を探す。当時は家に携帯電話もパソコンも無かったから、僕は本の裏表紙に書いてあった出版社に問合せをした。すると衝撃の回答が……

「絶版です」

つまりもう何処にも売っていないし刷ってもいないというのだ。オーマイガー!せっかくここまで来たのに!!失意のどん底に突き落とされた僕は、その日から、むやみに道端をじっと見つめるというオリジナルの修行を開始する。うん、たぶんそういうことじゃないと思うんだ。

小説を書き始めます

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どっかで見たような展開かもしれないが、どうやってもオーラというやつが視えなかった僕は、魔術の道を諦め現実逃避に爆進する。

父親がよくもらって来ていた、何年も前のキレイな手帳のメモ欄を破って、それを原稿用紙代わりにして、僕は来る日も来る日も、お花畑全開のストーリーを書き続けた。

書きすぎてお花畑っぽい話に飽きてきたら、次はキキちゃんを命がけで守って僕が死んじゃうような話も書いた。ダメ、あの世界に魔物とか登場させちゃ。

そして、疲れてくると槇原敬之のアルバムのめちゃくちゃ悲しい曲をかけて、壁にもたれてひたすら哀愁に浸った。そんなことを繰り返しながら、いよいよ僕の恋はクライマックスを迎えることになる。

なんかオネエっぽくなります

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なぜだ!なぜなんだ!?

結局かーいッ!!って思ったら申し訳ない。でもマジなんだ。

これについてはきちんと原因がわかっている。この頃の僕が魔女の宅急便の全セリフをパーフェクトに暗唱できるまでになっていたことは前述した。そして実際僕はヒマさえあれば、魔女の宅急便を脳内再生していたんだ。もしその回数もカウントするなら、おそらく僕は生涯で3000回以上魔女の宅急便を観ていることになるだろう。

世間の評価がどうあれ、アレはどちらかといわずとも女の子向けの作品だ。女の子の主人公が親元を離れて、人間関係でもまれたり、恋愛っぽいものを経験しながら大人になっていく話だ。さあ、そんなものを重複インストールしっぱなしの僕がどうなっていくか?もしあれがスティーブンセガールだったら、僕は今頃革ジャンを着てハーレーでフロリダ辺りを走っていたかもしれない。

ただでさえアイデンティティのふわふわな時期だ。僕は極めてナチュラルに女の子っぽくなっていた。しかもちょうどこの頃、僕はかねてから念願だった人生初の縮毛矯正をかけた。これは単純に、天然パーマがイヤだったからその解決として、だったのだが、これに対しての周囲の評価が……

「かわいい」

先生も同級生もみんなそんな風に言った。今では面影もないけれど、こんなおっさんにも童顔だった時期があるんだぜ。これが火にニトロを注ぐ結果となった。「カッコイイ」って言われると思っていたところにブチ込まれたこの予想外の評価は、僕の勘違いを加速させる。ぶっちゃけなんか知らんけどうれしかった。味わったことのない快感だったんだ。

――俺はもしかして、女としてイケているのかもしれない……。

さあ、完成だ。性自認が女子に傾いた時点で、キキちゃんはもはや恋の対象ではなく、むしろ敵だ。2年近くもみ上げた純愛は一気に終わりを迎える。アタシの方がカワイイんだからッ!!

そして運命の卒業式

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他の記事でも書いたが、僕の地元は小さな村だ。だから小中は一学年50人もいない。みんな兄弟みたいに仲が良かったのだが、僕はその中に於いてひとりめちゃくちゃ浮き始める。

そりゃそうだ。こないだまでいっしょに泥まみれになって遊んでいた友達が、突然「やだ日焼けしちゃう」とか言って遊びの誘いにも乗らなくなり、しかもSPF50くらいのコッテコテの日焼け止めを塗って登校するようになったら浮くに決まっている。頼むから誰か止めてやってくれ。

その中でも、小学生の時に大きな学校から転校してきたT君だけは今までと変わらず仲良くしてくれた。やっぱしマンモス校の人は寛大だ。

結局僕はそのままの状態で卒業式を迎えるのだけど、卒業式が終わっていつものようにT君と帰ろうとしていると、「せーんぱーい!」つって後輩の女子が走って来るんだ。このシチュエーション、誰が見ても告白だ。くぅー!甘酸っぱいぜ!!でも、こともあろうに僕はこの時「あ、俺だな」って思ったんだ。お前女子ちゃうんかーいッ!!まあもちろん彼女のお目当てはT君だった。

「あ、あの、えっと、その……」

呼び止めたはいいけど、なかなか言い出せないでモジモジしている彼女に、僕は黒歴史しちゃうんだ。

「好きならちゃんと言わなきゃダメよっ☆」

お前どっちやねん!!

結局、この僕のステータス異常は高校の入学直前まで続く。高校はこれまでより圧倒的な大人数で、しかも町の人たちがたくさんいるから、という理由で僕は必要以上に気を引き締めてしまうんだ。オネエ治ってよかった。しかし当時の僕は、まさかその3ヶ月後に自分がサッカーのゴールになることになるとは知る由もなかった……。

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