人間ゴータマ・シッダールタってこんな人③|はじめての説法

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【シリーズ記事】「自我の束縛を離れてブッダになった人が、世の困っている人にハッピーになる教えを説かないのもなんか違うな」と思い、重い腰を上げたシッダールタ。もともと王子様だし、学問もあるし、一般人相手に教えを説くくらい楽勝かと思いきや……

※最初の説法については諸説ありますが、ここでは私の好きな説で解説します。

ドッキドキの初説法は突然に

「あいつらならこの教えを理解してくれるんちゃう?」

シッダールタがまず自分の得た悟りについて話してみようと思ったのは、苦行時代の5人の仲間でした。

そこで、シッダールタは彼らに会いに、苦行者の集う鹿野苑(サールナート:鹿がめっちゃいるところ)へ向かいました。

 

すると道中、一人の修行者が声をかけてきました。

彼は名をウパカといい、シッダールタの歩く姿があまりにも凛々しく、これはさぞ立派な師匠のもとで修行をしている人に違いないと思い、声をかけたのでした。

「ずいぶんとツヤツヤしたお肌をされていますね。いったいどこの何というお師匠さんについて修行をされているのです?」
※この「お肌ツヤツヤですやん」は、当時のインドの修行者の間では尊敬の意味を込めた挨拶みたいなものだったようです。お肌ツヤツヤ→さぞ良い教えを心に宿しているに違いない、みたいな。

「いや、師匠はおらんで。おらんけど一人で悟ったんよ」

「え、一人で?」

「そう。さっき」

「(変なやつ。まあいいか……)で、どんな悟りを?」

「わたくしはすべてのものに打ち勝った者、すべてのものを知る者である。すべてのものごとに汚されていない。すべてのものを捨て、愛執を滅し、解脱している。みずからさとっているから、だれを師とめざそうか。わたくしに師はいない。わたくしと同じ者はいない。神々を含めた世界のうちで、わたくしに匹敵する者はいない。わたくしこそ世界において尊敬されるべき者であり、無常の師である。わたくしは唯一の正しくさとった者であり、清涼となりニルヴァーナを得ている。法輪を転ずるために、わたくしはカーシーの町に行くのだ。盲闇の世界において不死の鼓を打つのだ」(早島鏡正「人類の知的遺産3 ゴータマ・ブッダ」より)

自己紹介が派手すぎ

たぶん、悟ったばっかりで、悟りの爽快感でお尻が浮いていたのだと思うのですが、

「あのね、あのね!すごいの!めっちゃすごいの!」

って一生懸命身振り手振りで伝えようとしているシッダールタの姿が目に浮かびます。

 

「そっか、すごいね」

そう言ってウパカは残念そうに去っていきました。ウパカさん大人ですね。どついたりしませんでした。

 

余談ですが、シッダールタはこの時のことがかなりショックだったようで、80歳で亡くなる手前に説く教え「法華経」まで一人称で自分の主観で語ることを封印し、それまでは例え話で教えを説きます。

その例え話の主人公として一番使われたのが

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観自在菩薩(観音様)

です。

いろんなところで主人公にして例え話をしていたら、いつの間にか万能の仏様みたいになっていました。

もとは、物事を自在に観ることのできる悟りを得た修行者(菩薩)です。

気を取り直して初説法

そんなこんなで鹿野苑までやって来たシッダールタ。

その姿を見た5人の仲間は、彼が苦行をやめたのを知っていたので、シカトしようぜと話し合っていました。

ところが、いざシッダールタのほうからニコニコと近づいてくると、なんかただならぬ空気に飲まれ、気づいたらみんなで迎え入れていました。

 

「で、でもお前苦行やめたんやろ?」

「だって意味ないじゃん」

とは言わないシッダールタ。ウパカ氏の一件で学習しています。

 

「やめたよ。だって物事には二つの極端があって、『明日死ぬかもォォォォ!』って欲望を貪ることも、『解脱だ解脱だ!』って一切の欲望を押し殺すことも、どっちも人間にはふさわしくないって知ったもん」

「ほほう」

「そのどっちでもない道が正しい道。でもどっちでもないから絶妙で難しいかもしれんけど」

「苦行の道ではなく?」

「みんなの“自己”が働き続けて、この世や天上の悦びを求め続ける限り、一切の苦行って虚しいと思わん?」

「そうかも」

「心の欲望の火を鎮められなければ、結局いくら厳しい惨めな苦行をしても、自分を解放できないんちゃう?」

「たしかに」

「みんなが自分自身を克服した時にのみ、みんなは欲望から解放される。欲望から解放されたのなら、もはやこの世の悦楽なんて望まなくなる。その上で自然の欲求を満たすことはこの体を生かすために必要なことで、べつに汚らわしいことにはならんのと違う?」

「そのとおりだわ」

 

5人に聞く耳ができたところで、シッダールタは、悟りに至る道筋を八正道という教えと縁起の法則を交えて説きます。

すると、5人のうちの一人コンダンニャがよく教えを理解し、さっそく悟りを開きました。

シッダールタは喜びのあまり、こう叫んだといいます。

「コンダンニャ、アニャータ!!!(コンダンニャが悟った)」

かくして、コンダンニャはその後、アニャー尊者とか呼ばれるようになったのでした。

 

残る4人も続々とシッダールタに弟子入りし、ここに、たった6人の小さな教団ができたのでした。

 

続く