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僕は昔東京の駒込に住んでいたことがあります。当時は五反田の西側で働いていたのだけれど、仕事が忙しくて終電を逃してしまい、結局五反田で一夜を明かすっていう展開がけっこうあった。そんなある日のはなし。
その日も僕は終電を逃した
その日も僕は0:20くらいの山手線の終電を逃し、「またか。今日はどうするかなあ……」とか考えていた。
いや、終電に乗れるように帰れよ!
そう、そうなんです。でも、わりとアットホームでブラックな職場だったので、めちゃくちゃ帰りにくい雰囲気を出されていたんです。わかってくれる人、いますか?
いや、実はその後に来る0:50頃の電車が本当の最終なんだけど、池袋停まりだ。池袋から駒込までタップリ5kmある。タクシーだとお財布が痛い。歩くにしても足が痛い距離だ。
ただでさえ一日働いて疲れきっているのに、そこから人がみっちり乗ったキッツキツの電車に40分も揺られて、そのうえ5kmのウォーキングとかどんなトライアスロン?
それに、僕はミクロではそうでもないんだけど、マクロになった瞬間とんでもない方向音痴っぷりを発揮するので、怖くて仕方ない。青い看板さんはウソつきだ。
なので、僕はこの頃には終電を逃しても、「うわああああああ!!!」とかはならなかった。とりあえず、
今日はどこで飲もうかなー
ってなる。ほいほいホテルに泊まれるほどブルジョワではないし、僕はお酒を飲む時は基本ごはんを食べないので、どっかテキトーなおひとり様OKな飲み屋に入っちゃうのがいちばんリーズナブルな選択だった。
素敵なマダムからのお誘い
0:20の終電を逃した僕は西五反田のほうへと戻っていった。こういうことが多すぎて、一帯の朝方までやっている店の大半は常連みたいになっていたので、正直ちょっと飽きていた。
なんか疲れてるし明日も早いし、今日はおとなしく東のカプセルホテルにでも泊まるかな~
……その時だった。
僕の携帯が鳴った。出てみると、会社の先輩の独身マダム(60)からだった。
「じんちゃんもう帰った~?(ガヤガヤ)」※あ、忘れていましたけど僕のHNはJINです。
万年グロッカーの僕が言うのもあれだけれど、彼女はめちゃ飲んべえで知られていた。どうやら既に出来上がっているようだった。僕は終電を逃して今夜も五反田に泊まることになったと話した。
「じゃあじんちゃん戸越銀座いらっしゃいよ~♪パーッとやろう」
お姉さんあなた明日休みだからでしょ?こっちは朝からだっちゅーの!
「いやいや、姉さん僕明日も朝からなんですよ(ていうかトゴシギンザってどこ?)」
「じんちゃん!人生の先輩の言うことが聞けないの!?」
OH……相当キマっていらっしゃる。まあカプセルホテルもつまらんし、いっちょ行くか!と、僕は姉さんからのお誘いを受けることにした。
携帯で調べてみるとここから戸越銀座まで2kmもない。なーんだ、と僕は歩いて行くことにした。
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楽しい宴を終えて……
到着してみると、そこは小さな場末のスナックみたいなお店だった。案の定姉さんはすっかり仕上がっていらっしゃった。
「めずらしく若いのが来た!」と、ほかの常連さんたちからもすごく温かく迎えてもらえて、次から次へとお酒を勧められた。最初は控えるつもりだった僕も、気付けばすっかり出来上がっていた。常連さんたちと肩を組んで蒲田行進曲を歌ったところあたりまでは覚えている。
次に記憶が戻った時、僕は駒込駅前にいた。まだ暗かった。
うっわタクシー使ったんや!?
僕は慌てて財布を見た。五反田から駒込までタクシーを使うと昼間でも6,000円くらいかかる。それが割増料金だとあわわわわ……しかし、お金はたいして減ってはいなかった。
う~ん……、さっき店でめちゃ意気投合した気前の良さそうなおじさんがタクシー代を渡してくれたのかな?悪いな、今度お礼言いに行かなきゃな……
なんだか江戸っ子の人情に触れたみたいでほんわか温かい気持ちになったが、しばらくして、ちょっと違和感を覚え始めた。まだバリバリ酩酊状態&千鳥足の僕だったが、なんか景色がおかしい……。
あれ?駒込駅ってこんなレオパレスみたいなかんじだったっけ?
ん……?
んんんっ!?
!!!!!!!!
なにマゴメって!?どこ!!??
僕は慌てて携帯を出すと、今自分がいるこの馬込とかいういっこ足りない感満載の地名を調べた。
えええええええっ!!なんでこんなとこいるの!?
僕は一気に酔いが覚めて、ボケた頭をフル回転して状況を把握しようとした。
おそらく、僕はお店を出た後タクシーに乗ったんだと思う。たぶんそこでろれつが回っていなくて
「ぉまごめ……」
とか言ってしまったんだと思う。以前にも僕は酔っ払って、たこわさを注文しようとしてテーブルにタコスを5皿も並べたことがあったから、それしかないと思った。
ただいま~
まあ、起こってしまったことは仕方ない。僕はとりあえず五反田までの5kmの道のりを歩くことにした。まだ4時前だったし、運よく職場に早く出勤している人がいたら、断ってちょっと仮眠を取らせてもらえばいいや、みたいなことを考えた。
なんか手ぶらで歩くのも寂しいから、酔いもすっかり覚めちゃったし、コンビニでお酒を買って飲みながら歩くことにした。これが間違いだった。
朝から働いてぐったりだった体は、驚くほど早くお酒を吸収した。僕も僕で、キャンペーンで20円くらい安くなってるとかそんな理由でストロングのお酒を買っちゃったもんだから、僕は一気に楽しい気分になった。
明日の仕事がちょっと心配になったけど、まあこんな右も左もわからないところを夜中に5kmも歩くんだからシラフじゃやってらんねぇや、みたいな気持ちもあって、それはそれでよかった。僕はさっき買ったお酒を飲み切り、追加でもう一本買った。(←)
東京って楽しいな~。大都会だな~。牛糞のにおいとかしないからいいな~。
とかそんなことを考えながら、らりらり歩いて行った。
ところが、どのくらい歩いたかはわからないけれど、途中で雨が降り出した。別に濡れるくらいどうってことないんだけど、正直疲れていて、しかもまた酔っ払っていたので、なんかよろしくな勢いがあった。僕はタクシーを停めた。
「お客さん、着きましたよ?」
タクシーに乗って行き先を伝えた後、僕は眠ってしまったらしい。
「……え、ああ、ありがとうございますぅ~」
窓の外見た瞬間、僕は「キョェェェェエーーーーッ!!!!」って叫びそうになった。
馬込だった。
結局、タクシーの運ちゃんに事情を説明して五反田まで行ってもらい、その日深夜割増でタクシーに2回も乗った僕の財布は大ダメージを受けたのでした。
酔った時に品川大崎五反田辺りから駒込にタクシーで帰ろうとする人は、気をつけてほしい。